【不動産覚書】建築基準法と「道路」の鉄則
2025/12/08 (Mon) 07:40
━━━━━━━━━━━━vol.1051━2025.12.08━
不動産覚書~要点だけ。メールで届く、不動産の本質~
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XXXXさん
おはようございます。村上です。
前回までは、都市計画法という 「街全体の設計図」についてお話ししました。
「ここは住宅地」「ここは商業地」といった 大きなエリア分けが決まったら、 次は個々の建物についてのルールが必要です。
そこで登場するのが「建築基準法」。
私たち不動産業者にとって、 この法律、特に「道路」との関係は 物件の価値を決定づける生命線です。
「この土地、家が建てられるの?」 「セットバックって何?」
お客様からよく聞かれるこの質問に、 自信を持って答えられるよう、 今回は基礎をしっかりと固めていきましょう。
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■ メイントピック|建築基準法と「道路」の鉄則
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家を建てるためのルールブック、 それが「建築基準法」です。
なぜ自分の土地なのに、 自由に建ててはいけないのか?
それは、地震や火災から 命や財産を守るための「最低基準」だからです。
その中でも、不動産取引において 最もトラブルになりやすい 「道路」のルールについて解説します。
なぜ「道路」がそんなに重要なのか?
結論から言うと、「命を守るため」です。
もし火事が起きた時、 消防車が近づけない土地だったら? 急病人が出た時、 救急車が家の前まで来られなかったら?
そうした事態を防ぐために、 「建物は道路に接していなければならない」 という大原則があります。
これを「接道義務(せつどうぎむ)」と呼びます。
接道義務の「2つの数字」を覚える
基本のルールは以下の通りです。
『幅4メートル以上の道路に、 敷地が2メートル以上接していること』
・道路の幅=4m(消防車が通れる広さ) ・接する幅=2m(人がスムーズに出入りできる幅)
この条件を満たさない土地には、 原則として新しい家を建てることはできません。 いわゆる「再建築不可物件」となり、 資産価値は著しく下がってしまいます。
狭い道でも家が建つ?「みなし道路」の救済
「でも、うちの前の道は幅4mもないけど 普通に家が建っているよ?」
そう思われる方もいるでしょう。 ここで登場するのが「みなし道路(2項道路)」です。
建築基準法ができたのは1950年。 それより前からある古い道で、 行政が指定したものは、 幅が4m未満でも「道路」として認められます。
ただし、条件があります。 それが「セットバック(敷地後退)」です。
将来的に道を4mに広げるために、 道路の中心線から2m下がったところを 敷地の境界線とみなすルールです。
下がった部分(セットバック部分)は 道路として提供するため、 自分の敷地であっても塀を立てたり、 建ぺい率の計算に入れたりすることはできません。
「将来のために、みんなで少しずつ 土地を出し合って道を広げましょう」
という、相互協力の精神が このルールの根底にはあります。
プロが必ず確認すべき「道路調査」の手順
物件調査の際は、以下のステップで 道路の落とし穴を防ぎましょう。
(1) 役所で「道路種別」を聞く 見た目が道路でも、法的な道路とは限りません。 建築指導課などで必ず確認してください。
(2) 幅員(ふくいん)を測る 現地と役所の台帳、両方で幅を確認します。 4m未満なら「2項道路」の可能性大です。
(3) 間口(まぐち)を測る 道路に接している長さが2m以上あるか。 路地状敷地(旗竿地)の場合は特に注意です。
(4) セットバックの有無 2項道路の場合、どこまで下がる必要があるか。 有効宅地面積が変わるので、価格査定に直結します。
道路は、土地にとっての「ライフライン」。 ここを見誤ると、取り返しのつかないことになります。 基本に忠実に、しっかり調査していきましょう。
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■ 編集後記|道がつなぐもの
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不動産の調査で古い路地裏を歩いていると、 ふと足元の「道」に愛おしさを感じることがあります。
車も入れないような細い道。 法的には「2項道路」として、 セットバックを求められる厄介な存在かもしれません。
でも、そこには何十年もの間、 誰かが通り、誰かとすれ違い、 子供たちが駆け回った記憶が染み込んでいます。
セットバックで少しずつ道が広がり、 街が安全になっていくのは素晴らしいこと。 不動産業者として、その重要性は痛いほど分かります。
一方で、軒先と軒先が触れ合うような あの距離感が消えていくことに、 ほんの少しだけ寂しさを感じるのも事実です。
道は単なるアスファルトではなく、 人と人をつなぐ血管のようなもの。
私たちが扱っているのは、 法令上の「道路」であると同時に、 誰かの生活を支えてきた「道」なんですよね。
安全な未来を作りながら、 その土地の記憶も大切に扱いたい。 そんなことを思った梅雨空の下でした。
さて、このメルマガも 今回を含めて残り「あと4回」となりました。
長い間お付き合いいただいている皆様に、 最後まで「不動産の本質」をお届けできるよう、 気を引き締めて書いていきます。
次回もぜひ、お付き合いください。
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■ 発行人 株式会社三成開発 村上哲一
熊本県熊本市中央区南熊本三丁目14番3号
くまもと大学連携インキュベータ108号
E-MAIL:murakami@3sei.jp
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不動産覚書:https://i-magazine.bme.jp/92/193/372/XXXX
熊本の開発許可申請:https://i-magazine.bme.jp/92/193/373/XXXX
「まち」を「つくる」:https://i-magazine.bme.jp/92/193/374/XXXX
熊本の登記測量:https://i-magazine.bme.jp/92/193/375/XXXX
熊本の経営事項審査:https://i-magazine.bme.jp/92/193/376/XXXX
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XXXX
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XXXXさん
おはようございます。村上です。
前回までは、都市計画法という 「街全体の設計図」についてお話ししました。
「ここは住宅地」「ここは商業地」といった 大きなエリア分けが決まったら、 次は個々の建物についてのルールが必要です。
そこで登場するのが「建築基準法」。
私たち不動産業者にとって、 この法律、特に「道路」との関係は 物件の価値を決定づける生命線です。
「この土地、家が建てられるの?」 「セットバックって何?」
お客様からよく聞かれるこの質問に、 自信を持って答えられるよう、 今回は基礎をしっかりと固めていきましょう。
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■ メイントピック|建築基準法と「道路」の鉄則
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家を建てるためのルールブック、 それが「建築基準法」です。
なぜ自分の土地なのに、 自由に建ててはいけないのか?
それは、地震や火災から 命や財産を守るための「最低基準」だからです。
その中でも、不動産取引において 最もトラブルになりやすい 「道路」のルールについて解説します。
なぜ「道路」がそんなに重要なのか?
結論から言うと、「命を守るため」です。
もし火事が起きた時、 消防車が近づけない土地だったら? 急病人が出た時、 救急車が家の前まで来られなかったら?
そうした事態を防ぐために、 「建物は道路に接していなければならない」 という大原則があります。
これを「接道義務(せつどうぎむ)」と呼びます。
接道義務の「2つの数字」を覚える
基本のルールは以下の通りです。
『幅4メートル以上の道路に、 敷地が2メートル以上接していること』
・道路の幅=4m(消防車が通れる広さ) ・接する幅=2m(人がスムーズに出入りできる幅)
この条件を満たさない土地には、 原則として新しい家を建てることはできません。 いわゆる「再建築不可物件」となり、 資産価値は著しく下がってしまいます。
狭い道でも家が建つ?「みなし道路」の救済
「でも、うちの前の道は幅4mもないけど 普通に家が建っているよ?」
そう思われる方もいるでしょう。 ここで登場するのが「みなし道路(2項道路)」です。
建築基準法ができたのは1950年。 それより前からある古い道で、 行政が指定したものは、 幅が4m未満でも「道路」として認められます。
ただし、条件があります。 それが「セットバック(敷地後退)」です。
将来的に道を4mに広げるために、 道路の中心線から2m下がったところを 敷地の境界線とみなすルールです。
下がった部分(セットバック部分)は 道路として提供するため、 自分の敷地であっても塀を立てたり、 建ぺい率の計算に入れたりすることはできません。
「将来のために、みんなで少しずつ 土地を出し合って道を広げましょう」
という、相互協力の精神が このルールの根底にはあります。
プロが必ず確認すべき「道路調査」の手順
物件調査の際は、以下のステップで 道路の落とし穴を防ぎましょう。
(1) 役所で「道路種別」を聞く 見た目が道路でも、法的な道路とは限りません。 建築指導課などで必ず確認してください。
(2) 幅員(ふくいん)を測る 現地と役所の台帳、両方で幅を確認します。 4m未満なら「2項道路」の可能性大です。
(3) 間口(まぐち)を測る 道路に接している長さが2m以上あるか。 路地状敷地(旗竿地)の場合は特に注意です。
(4) セットバックの有無 2項道路の場合、どこまで下がる必要があるか。 有効宅地面積が変わるので、価格査定に直結します。
道路は、土地にとっての「ライフライン」。 ここを見誤ると、取り返しのつかないことになります。 基本に忠実に、しっかり調査していきましょう。
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■ 編集後記|道がつなぐもの
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不動産の調査で古い路地裏を歩いていると、 ふと足元の「道」に愛おしさを感じることがあります。
車も入れないような細い道。 法的には「2項道路」として、 セットバックを求められる厄介な存在かもしれません。
でも、そこには何十年もの間、 誰かが通り、誰かとすれ違い、 子供たちが駆け回った記憶が染み込んでいます。
セットバックで少しずつ道が広がり、 街が安全になっていくのは素晴らしいこと。 不動産業者として、その重要性は痛いほど分かります。
一方で、軒先と軒先が触れ合うような あの距離感が消えていくことに、 ほんの少しだけ寂しさを感じるのも事実です。
道は単なるアスファルトではなく、 人と人をつなぐ血管のようなもの。
私たちが扱っているのは、 法令上の「道路」であると同時に、 誰かの生活を支えてきた「道」なんですよね。
安全な未来を作りながら、 その土地の記憶も大切に扱いたい。 そんなことを思った梅雨空の下でした。
さて、このメルマガも 今回を含めて残り「あと4回」となりました。
長い間お付き合いいただいている皆様に、 最後まで「不動産の本質」をお届けできるよう、 気を引き締めて書いていきます。
次回もぜひ、お付き合いください。
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■ 発行人 株式会社三成開発 村上哲一
熊本県熊本市中央区南熊本三丁目14番3号
くまもと大学連携インキュベータ108号
E-MAIL:murakami@3sei.jp
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不動産覚書:https://i-magazine.bme.jp/92/193/372/XXXX
熊本の開発許可申請:https://i-magazine.bme.jp/92/193/373/XXXX
「まち」を「つくる」:https://i-magazine.bme.jp/92/193/374/XXXX
熊本の登記測量:https://i-magazine.bme.jp/92/193/375/XXXX
熊本の経営事項審査:https://i-magazine.bme.jp/92/193/376/XXXX
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