【不動産覚書】相続土地国庫帰属制度の承認の壁と費用対効果。「売れない土地」の最終手段。
2025/09/22 (Mon) 07:40
━━━━━━━━━━━━vol.1040━2025.09.22━
不動産覚書~要点だけ。メールで届く、不動産の本質~
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XXXXさん
おはようございます。村上です。
「相続したはいいものの、どうしようもなくて…」
お客様から、そんなご相談を受ける機会が増えていませんか?
利用予定がなく、売却も難しい。でも、管理責任と固定資産税だけが重くのしかかる。こうした土地が、社会問題となっている「所有者不明土地」の温床となっています。
この問題を解決する一手として、2023年4月から新しい制度がスタートしました。それが「相続土地国庫帰属制度」です。
今回は、私たち不動産のプロが知っておくべき、この新制度の要点と、お客様へ提案する際の注意点をまとめました。提案の幅を広げ、より深い信頼を得るための一助となれば幸いです。
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■ メイントピック|相続土地国庫帰属制度の承認の壁と費用対効果。「売れない土地」の最終手段。
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「相続土地国庫帰属制度」とは、ひと言でいえば「相続した不要な土地を、費用を払って国に引き取ってもらう制度」です。所有者不明土地を未然に防ぐことを目的に創設されました。
お客様への適切なアドバイスに繋がる、3つの重要ポイントを押さえておきましょう。
1. どんな土地でもOK、ではない!「引き取れない土地」の条件
国が引き取るのは、あくまで「管理に過大な費用や手間がかからない土地」が前提です。申請しても審査に通らない、あるいは門前払いとなるケースを事前に把握しておくことが重要です。
▼申請が認められない土地(却下事由)
建物(倉庫やビニールハウス等も含む)がある土地
担保権や地上権など、他人の権利が設定されている土地
隣地との境界がはっきりしない土地
▼審査で承認されない土地(不承認事由)
車両や井戸、墓石などが放置されている土地
土中にコンクリートガラなどが埋まっている土地
崖地など、管理に多額の費用がかかる土地
他人の土地に囲まれていて、通行権で争いがある土地
更地であることはもちろん、権利関係や現地の状況をしっかり確認することが、提案の第一歩となります。
2. 手続きの流れと「2種類」の費用
この制度は、不動産を売却してお金を得るのとは全く逆で、「費用をかけて手放す」という点を明確に伝える必要があります。
【手続きのフロー】
承認申請:土地を管轄する法務局へ申請書を提出。
審査:法務局による書類審査と現地調査。
承認通知:審査結果が書面で届く。
負担金納付:承認通知から30日以内に負担金を納付。
国庫帰属:納付が確認された時点で、所有権が国へ移転。
【必要となる費用】
審査手数料:申請時に土地1筆あたり14,000円(収入印紙で納付)。不承認でも返還されません。
負担金:承認された場合のみ納付。国が10年間にわたり土地を管理するための費用で、宅地や田畑、森林など多くの場合で基本20万円。市街地の宅地などでは、面積に応じて金額が加算されます。
3. プロとしてどう提案すべきか?
この制度は万能薬ではありません。私たち不動産のプロが提案する際は、その位置づけを明確にすることが不可欠です。
最優先は「売却可能性」の調査
お客様が「価値がない」と思い込んでいる土地でも、専門家の視点で見れば買い手が見つかる可能性はあります。まずはプロとして市場価値を調査し、売却の可能性を最大限に探ることが私たちの責務です。
国庫帰属は「最終手段」
あらゆる手を尽くしても売却が著しく困難で、かつ所有し続ける負担(税金・管理費)が制度利用の費用を上回る場合に、初めて有効となる「最終手段に近い選択肢」として提示すべきです。
私たちの役割は、売却や活用、そして国庫帰属といった複数の選択肢を公平に示し、お客様が最善の判断を下せるようサポートすることにあります。
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■ 編集後記|その土地に「名前」はありましたか?
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先日、古いアルバムを整理していたら、子供の頃に「秘密基地」と呼んでいた空き地の写真が出てきました。
そこは、誰の土地なのかも知らない、ただ雑草が生い茂るだけの場所。でも私たちにとっては、作戦会議を開いたり、宝物を隠したりする、かけがえのない特別な空間でした。もちろん、登記簿上の地番とは別に、仲間うちだけの「名前」で呼んでいたんです。
今回のテーマである「相続土地国庫帰属制度」は、誰からも顧みられなくなり、名前で呼ばれることもなくなった土地を整理するための仕組みとも言えます。それは社会にとって非常に重要で、必要なことです。
ただ、ふと思うのです。お客様が手放そうとしている土地にも、かつては誰かの「秘密基地」だったり、家族の思い出が詰まっていたり、そこで暮らす人だけの特別な「名前」があったのかもしれない、と。
私たちの仕事は、資産価値という数字の向こう側にある、そうした人の営みや想いに寄り添うこと。その土地が持つ本当の価値を見失わないよう、常に心に留めておきたい。そんなことを考えさせられた一枚の写真でした。
次回も、少しでもお役に立つ情報をお届けできるよう努めます。
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■ 発行人
株式会社三成開発 村上哲一
〒860-0088 熊本県熊本市北区津浦町44番5号
E-MAIL:murakami@3sei.jp
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不動産覚書:https://i-magazine.bme.jp/92/193/232/XXXX
熊本の開発許可申請:https://i-magazine.bme.jp/92/193/233/XXXX
「まち」を「つくる」:https://i-magazine.bme.jp/92/193/234/XXXX
熊本の登記測量:https://i-magazine.bme.jp/92/193/235/XXXX
熊本の経営事項審査:https://i-magazine.bme.jp/92/193/236/XXXX
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XXXX
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XXXXさん
おはようございます。村上です。
「相続したはいいものの、どうしようもなくて…」
お客様から、そんなご相談を受ける機会が増えていませんか?
利用予定がなく、売却も難しい。でも、管理責任と固定資産税だけが重くのしかかる。こうした土地が、社会問題となっている「所有者不明土地」の温床となっています。
この問題を解決する一手として、2023年4月から新しい制度がスタートしました。それが「相続土地国庫帰属制度」です。
今回は、私たち不動産のプロが知っておくべき、この新制度の要点と、お客様へ提案する際の注意点をまとめました。提案の幅を広げ、より深い信頼を得るための一助となれば幸いです。
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■ メイントピック|相続土地国庫帰属制度の承認の壁と費用対効果。「売れない土地」の最終手段。
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「相続土地国庫帰属制度」とは、ひと言でいえば「相続した不要な土地を、費用を払って国に引き取ってもらう制度」です。所有者不明土地を未然に防ぐことを目的に創設されました。
お客様への適切なアドバイスに繋がる、3つの重要ポイントを押さえておきましょう。
1. どんな土地でもOK、ではない!「引き取れない土地」の条件
国が引き取るのは、あくまで「管理に過大な費用や手間がかからない土地」が前提です。申請しても審査に通らない、あるいは門前払いとなるケースを事前に把握しておくことが重要です。
▼申請が認められない土地(却下事由)
建物(倉庫やビニールハウス等も含む)がある土地
担保権や地上権など、他人の権利が設定されている土地
隣地との境界がはっきりしない土地
▼審査で承認されない土地(不承認事由)
車両や井戸、墓石などが放置されている土地
土中にコンクリートガラなどが埋まっている土地
崖地など、管理に多額の費用がかかる土地
他人の土地に囲まれていて、通行権で争いがある土地
更地であることはもちろん、権利関係や現地の状況をしっかり確認することが、提案の第一歩となります。
2. 手続きの流れと「2種類」の費用
この制度は、不動産を売却してお金を得るのとは全く逆で、「費用をかけて手放す」という点を明確に伝える必要があります。
【手続きのフロー】
承認申請:土地を管轄する法務局へ申請書を提出。
審査:法務局による書類審査と現地調査。
承認通知:審査結果が書面で届く。
負担金納付:承認通知から30日以内に負担金を納付。
国庫帰属:納付が確認された時点で、所有権が国へ移転。
【必要となる費用】
審査手数料:申請時に土地1筆あたり14,000円(収入印紙で納付)。不承認でも返還されません。
負担金:承認された場合のみ納付。国が10年間にわたり土地を管理するための費用で、宅地や田畑、森林など多くの場合で基本20万円。市街地の宅地などでは、面積に応じて金額が加算されます。
3. プロとしてどう提案すべきか?
この制度は万能薬ではありません。私たち不動産のプロが提案する際は、その位置づけを明確にすることが不可欠です。
最優先は「売却可能性」の調査
お客様が「価値がない」と思い込んでいる土地でも、専門家の視点で見れば買い手が見つかる可能性はあります。まずはプロとして市場価値を調査し、売却の可能性を最大限に探ることが私たちの責務です。
国庫帰属は「最終手段」
あらゆる手を尽くしても売却が著しく困難で、かつ所有し続ける負担(税金・管理費)が制度利用の費用を上回る場合に、初めて有効となる「最終手段に近い選択肢」として提示すべきです。
私たちの役割は、売却や活用、そして国庫帰属といった複数の選択肢を公平に示し、お客様が最善の判断を下せるようサポートすることにあります。
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■ 編集後記|その土地に「名前」はありましたか?
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先日、古いアルバムを整理していたら、子供の頃に「秘密基地」と呼んでいた空き地の写真が出てきました。
そこは、誰の土地なのかも知らない、ただ雑草が生い茂るだけの場所。でも私たちにとっては、作戦会議を開いたり、宝物を隠したりする、かけがえのない特別な空間でした。もちろん、登記簿上の地番とは別に、仲間うちだけの「名前」で呼んでいたんです。
今回のテーマである「相続土地国庫帰属制度」は、誰からも顧みられなくなり、名前で呼ばれることもなくなった土地を整理するための仕組みとも言えます。それは社会にとって非常に重要で、必要なことです。
ただ、ふと思うのです。お客様が手放そうとしている土地にも、かつては誰かの「秘密基地」だったり、家族の思い出が詰まっていたり、そこで暮らす人だけの特別な「名前」があったのかもしれない、と。
私たちの仕事は、資産価値という数字の向こう側にある、そうした人の営みや想いに寄り添うこと。その土地が持つ本当の価値を見失わないよう、常に心に留めておきたい。そんなことを考えさせられた一枚の写真でした。
次回も、少しでもお役に立つ情報をお届けできるよう努めます。
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■ 発行人
株式会社三成開発 村上哲一
〒860-0088 熊本県熊本市北区津浦町44番5号
E-MAIL:murakami@3sei.jp
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不動産覚書:https://i-magazine.bme.jp/92/193/232/XXXX
熊本の開発許可申請:https://i-magazine.bme.jp/92/193/233/XXXX
「まち」を「つくる」:https://i-magazine.bme.jp/92/193/234/XXXX
熊本の登記測量:https://i-magazine.bme.jp/92/193/235/XXXX
熊本の経営事項審査:https://i-magazine.bme.jp/92/193/236/XXXX
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