【不動産覚書】「プロパンガススキーム」の光と影と新ルール
2025/09/15 (Mon) 07:40
━━━━━━━━━━━━vol.1039━2025.09.15━
不動産覚書~要点だけ。メールで届く、不動産の本質~
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XXXXさん
おはようございます。村上です。
「この物件、初期費用ゼロで給湯器やエアコンを新品にできますよ」
オーナー様への提案で、そんな魅力的な話ができる「プロパンガススキーム」。空室対策や物件の価値向上に繋がる有効な手段の一つです。
しかし、その裏側にある仕組みや、法改正によって変化した「説明責任」について、正確に理解できているでしょうか?
今回は、知っているようで意外と深い「プロパンガススキーム」の世界を、法改正のポイントも踏まえながら、改めて整理します。お客様への説明、そして長期的な信頼関係構築の一助となれば幸いです。
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■ メイントピック|「プロパンガススキーム」の光と影と新ルール
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「初期費用ゼロ」で物件の設備を刷新できるプロパンガススキーム。その仕組みと、実務で押さえるべき重要ポイントを解説します。
1. なぜ「初期費用ゼロ」が実現できるのか?
プロパンガススキームとは、端的に言えば「大家さんが初期費用を負担することなく、ガスコンロや給湯器、エアコン等の設備を新しくできる仕組み」です。
この仕組みの核となるのが、大家さんとプロパンガス会社の間で結ばれる「無償貸与契約」です。
無償貸与契約とは?
ガス会社が設備費用を肩代わりする代わりに、その物件で使われるプロパンガスを10年~15年といった長期間、独占的に供給する権利を得る契約です。設備は大家さんへの「贈与」ではなく、あくまで「貸与(レンタル)」であり、所有権はガス会社にあります。
ガス会社は、長期にわたる安定したガス供給先を確保できるため、先行投資として設備費用を負担するのです。
2. 知っておくべき「料金のからくり」と入居者への影響
ガス会社が負担した設備費用は、どこで回収されるのでしょうか。その答えは、入居者様が毎月支払う「ガス料金」にあります。
月々のガス料金には、ガス会社が立て替えた設備費用が少しずつ上乗せされています。これが「初期費用ゼロ」のからくりです。
この仕組みは、入居者様にとって以下のメリット・デメリットを生みます。
メリット(嬉しいポイント)
新品のガスコンロや給湯器、エアコンなどが使えるため、快適な生活が送れる。
エアコン等が設置済みの場合、自身で購入・設置する必要がなく、入居時の初期費用を抑えられる。
デメリット(知っておくべきこと)
月々のガス料金に設備費用が上乗せされるため、周辺相場よりガス代が割高になる可能性がある。
無償貸与契約期間中は、入居者様が個人的にガス会社を選んだり変更したりすることはできない。
3. 【法改正対応】トラブルを防ぐ新しいルール
かつては料金の内訳が不透明でトラブルの原因となることもありましたが、液化石油ガス法の改正により、「料金の見える化」がルールとして定められました。
私たち不動産従事者が押さえるべき最重要ポイントは2つです。
ポイント1:「三部料金制」による内訳の明確化
料金の内訳を以下の3つに分けて、それぞれ明記することが基本となりました。
基本料金:ガスの保安・管理などにかかる固定費
従量料金:使用したガスの量に応じた費用
設備料金:無償貸与された設備のレンタル料にあたる部分
この「設備料金」が明記されることで、入居者様は設備のために月々いくら支払っているのかを一目で理解できるようになりました。
ポイント2:「書面での説明」の原則化
これらの料金内訳について、口頭だけでなく、書面を交付して説明することが原則となりました。これにより「言った、言わない」のトラブルを防ぎ、お客様に安心して契約していただくことができます。
法律は、私たちを縛るものではなく、むしろお客様への誠実な説明を後押ししてくれる「強い味方」です。メリットとデメリットを正しく伝え、信頼を築くことが、これまで以上に重要になっています。
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■ 編集後記|正直さが、いちばんの武器になる
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先日、家電量販店で新しいパソコンを探していた時のことです。
最新の高スペックモデルを前に「これが一番良いんだろうな」と思っていると、店員さんが話しかけてきました。私の使い方(主に文章作成と調べもの)を伝えると、彼はこう言ったのです。
「でしたら、お客様にはこの最新モデルはオーバースペックかもしれません。一つ前のこちらのモデルでも十分快適ですし、価格もかなり抑えられますよ」
正直、驚きました。高い方を売るのが彼の仕事だと思っていたからです。しかし、その正直な提案のおかげで、私は自分に最適な買い物ができ、その店員さんとお店への信頼感がぐっと高まりました。
今回のプロパンガススキームの話も、これと似ているかもしれません。メリットだけを強調すれば、契約はスムーズに進むでしょう。しかし、その先にあるお客様の生活を考えた時、伝えるべき情報を正直に伝える姿勢こそが、最終的に「あなたから紹介してもらって良かった」という信頼に繋がるのだと、改めて感じさせられます。
数字や法律の知識はもちろん大切ですが、その根底にある「誠実さ」こそが、私たちの何よりの武器になる。そんなことを考えた一日でした。
次回も、少しでもお役に立つ情報をお届けできるよう努めます。
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■ 発行人
株式会社三成開発 村上哲一
〒860-0088 熊本県熊本市北区津浦町44番5号
E-MAIL:murakami@3sei.jp
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不動産覚書:https://i-magazine.bme.jp/92/193/222/XXXX
熊本の開発許可申請:https://i-magazine.bme.jp/92/193/223/XXXX
「まち」を「つくる」:https://i-magazine.bme.jp/92/193/224/XXXX
熊本の登記測量:https://i-magazine.bme.jp/92/193/225/XXXX
熊本の経営事項審査:https://i-magazine.bme.jp/92/193/226/XXXX
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XXXX
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XXXXさん
おはようございます。村上です。
「この物件、初期費用ゼロで給湯器やエアコンを新品にできますよ」
オーナー様への提案で、そんな魅力的な話ができる「プロパンガススキーム」。空室対策や物件の価値向上に繋がる有効な手段の一つです。
しかし、その裏側にある仕組みや、法改正によって変化した「説明責任」について、正確に理解できているでしょうか?
今回は、知っているようで意外と深い「プロパンガススキーム」の世界を、法改正のポイントも踏まえながら、改めて整理します。お客様への説明、そして長期的な信頼関係構築の一助となれば幸いです。
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■ メイントピック|「プロパンガススキーム」の光と影と新ルール
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「初期費用ゼロ」で物件の設備を刷新できるプロパンガススキーム。その仕組みと、実務で押さえるべき重要ポイントを解説します。
1. なぜ「初期費用ゼロ」が実現できるのか?
プロパンガススキームとは、端的に言えば「大家さんが初期費用を負担することなく、ガスコンロや給湯器、エアコン等の設備を新しくできる仕組み」です。
この仕組みの核となるのが、大家さんとプロパンガス会社の間で結ばれる「無償貸与契約」です。
無償貸与契約とは?
ガス会社が設備費用を肩代わりする代わりに、その物件で使われるプロパンガスを10年~15年といった長期間、独占的に供給する権利を得る契約です。設備は大家さんへの「贈与」ではなく、あくまで「貸与(レンタル)」であり、所有権はガス会社にあります。
ガス会社は、長期にわたる安定したガス供給先を確保できるため、先行投資として設備費用を負担するのです。
2. 知っておくべき「料金のからくり」と入居者への影響
ガス会社が負担した設備費用は、どこで回収されるのでしょうか。その答えは、入居者様が毎月支払う「ガス料金」にあります。
月々のガス料金には、ガス会社が立て替えた設備費用が少しずつ上乗せされています。これが「初期費用ゼロ」のからくりです。
この仕組みは、入居者様にとって以下のメリット・デメリットを生みます。
メリット(嬉しいポイント)
新品のガスコンロや給湯器、エアコンなどが使えるため、快適な生活が送れる。
エアコン等が設置済みの場合、自身で購入・設置する必要がなく、入居時の初期費用を抑えられる。
デメリット(知っておくべきこと)
月々のガス料金に設備費用が上乗せされるため、周辺相場よりガス代が割高になる可能性がある。
無償貸与契約期間中は、入居者様が個人的にガス会社を選んだり変更したりすることはできない。
3. 【法改正対応】トラブルを防ぐ新しいルール
かつては料金の内訳が不透明でトラブルの原因となることもありましたが、液化石油ガス法の改正により、「料金の見える化」がルールとして定められました。
私たち不動産従事者が押さえるべき最重要ポイントは2つです。
ポイント1:「三部料金制」による内訳の明確化
料金の内訳を以下の3つに分けて、それぞれ明記することが基本となりました。
基本料金:ガスの保安・管理などにかかる固定費
従量料金:使用したガスの量に応じた費用
設備料金:無償貸与された設備のレンタル料にあたる部分
この「設備料金」が明記されることで、入居者様は設備のために月々いくら支払っているのかを一目で理解できるようになりました。
ポイント2:「書面での説明」の原則化
これらの料金内訳について、口頭だけでなく、書面を交付して説明することが原則となりました。これにより「言った、言わない」のトラブルを防ぎ、お客様に安心して契約していただくことができます。
法律は、私たちを縛るものではなく、むしろお客様への誠実な説明を後押ししてくれる「強い味方」です。メリットとデメリットを正しく伝え、信頼を築くことが、これまで以上に重要になっています。
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■ 編集後記|正直さが、いちばんの武器になる
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先日、家電量販店で新しいパソコンを探していた時のことです。
最新の高スペックモデルを前に「これが一番良いんだろうな」と思っていると、店員さんが話しかけてきました。私の使い方(主に文章作成と調べもの)を伝えると、彼はこう言ったのです。
「でしたら、お客様にはこの最新モデルはオーバースペックかもしれません。一つ前のこちらのモデルでも十分快適ですし、価格もかなり抑えられますよ」
正直、驚きました。高い方を売るのが彼の仕事だと思っていたからです。しかし、その正直な提案のおかげで、私は自分に最適な買い物ができ、その店員さんとお店への信頼感がぐっと高まりました。
今回のプロパンガススキームの話も、これと似ているかもしれません。メリットだけを強調すれば、契約はスムーズに進むでしょう。しかし、その先にあるお客様の生活を考えた時、伝えるべき情報を正直に伝える姿勢こそが、最終的に「あなたから紹介してもらって良かった」という信頼に繋がるのだと、改めて感じさせられます。
数字や法律の知識はもちろん大切ですが、その根底にある「誠実さ」こそが、私たちの何よりの武器になる。そんなことを考えた一日でした。
次回も、少しでもお役に立つ情報をお届けできるよう努めます。
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■ 発行人
株式会社三成開発 村上哲一
〒860-0088 熊本県熊本市北区津浦町44番5号
E-MAIL:murakami@3sei.jp
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不動産覚書:https://i-magazine.bme.jp/92/193/222/XXXX
熊本の開発許可申請:https://i-magazine.bme.jp/92/193/223/XXXX
「まち」を「つくる」:https://i-magazine.bme.jp/92/193/224/XXXX
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