【不動産覚書】除雪DXに学ぶ「選ばれる街」の条件
2025/09/01 (Mon) 07:40
━━━━━━━━━━━━vol.1037━2025.09.01━
不動産覚書~要点だけ。メールで届く、不動産の本質~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
XXXXさん
おはようございます。村上です。
「このエリアは、行政の対応がどうも…」
顧客との会話の中で、そんな声を聞いたことはありませんか?
どんなに魅力的な物件でも、除雪やごみ収集といった日々の行政サービスへの不満は、エリア全体の評価を静かに、しかし確実に蝕んでいきます。
「見えない公共サービス」への不満が、不動産価値を毀損するリスクになりつつある今、私たちは何をすべきでしょうか。
今回は、ある町の除雪業務改革の事例から、ICTを活用して「住民の不満」を「エリアの信頼」へと転換させたプロセスを紐解きます。これは、未来の不動産価値を考える上で、避けては通れないテーマです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ メイントピック|除雪DXに学ぶ「選ばれる街」の条件
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
多くの地方都市が抱える、インフラ老朽化と担い手不足。この課題は、特に冬の「除雪」業務に凝縮されて現れます。住民からの「いつ来るのか」という問い合わせ、職員の疲弊、そして非効率な現場作業…この負のスパイラルが、行政への不信感を募らせていました。
この根深い課題を、岩手県のある町がICTの力で見事に解決しました。
◆課題解決の鍵は、身近な技術の組み合わせ
彼らが導入したのは、特別な魔法ではありません。私たちのスマートフォンにも搭載されている「GPS(全地球測位システム)」と「GIS(地理情報システム)」を組み合わせた、シンプルな「除雪車両管理システム」でした。
GPSで「見える化」する
すべての除雪車両に手のひらサイズのGPS端末を設置。これにより、各車両が「今どこで、何をしているか」がリアルタイムで正確に把握できるようになりました。
GISで「意味」を持たせる
役場のPCに表示される電子地図(GIS)上に、全車両の位置情報を表示。優先道路や作業完了エリアなどを色分けすることで、これまで運転手の頭の中にしかなかった情報が、誰の目にも明らかな「意味のあるデータ」へと変わりました。
◆ICT導入がもたらした、劇的な変化
この「見える化」は、関係者全員に驚くべき変化をもたらしました。
【役場職員】自信に満ちた回答が可能に
住民からの問い合わせに対し、モニターを見ながら「〇〇地区を現在作業中です。ご自宅周辺には約1時間後に到着する見込みです」と、データに基づいた的確な回答が可能に。クレーム対応のストレスから解放されました。
【現場の運転手】煩雑な事務作業からの解放
走行ルートや作業時間はシステムが自動で記録し、日報を作成。疲労困憊の中で行っていた手書きの報告業務がなくなり、本来の作業と休息に集中できるようになりました。
【住民】不安から「安心と信頼」へ
「いつ来るか分からない」という最大の不安が解消されたことで、行政への不満は信頼へと変わりました。
◆数字が証明する、圧倒的な導入効果
この変革は、感覚的なものではなく、明確な数字となって表れています。
報告・集計業務:9割以上 削減
住民からの問い合わせ:7割 減少
全体の燃料費:15% 削減
これは、コスト削減と住民満足度の向上を同時に実現した、まさに「課題解決型DX」の成功事例です。
◆不動産開発に活かすべき「3つの視点」
この事例は、私たち不動産業に携わる者にとっても示唆に富んでいます。
「マネジメントされた街」という付加価値
行政サービスが効率的で、情報が透明化されているまちは、それ自体が強力なセールスポイントになります。物件の価値は、ハード(建物)だけでなく、ソフト(運営管理の質)によって大きく左右される時代です。
ICTインフラは「第4のインフラ」
水道・ガス・電気に加え、データを活用した行政基盤という「第4のインフラ」が整備されているかは、エリアの将来性を見極める重要な指標となります。
公民連携でエリア価値を共創する
開発計画段階から、地域のICT基盤と連携するスマート街区を提案するなど、行政と共にエリア全体の価値を高める視点が、これからのデベロッパーには不可欠です。
インフラ運営の質が、不動産の価値を決める。この事実は、今後の事業戦略を立てる上で、決して無視できない要素となるでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 編集後記|「当たり前」を支えるもの
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
先日、査定を依頼されたマンションのエントランスが、いつも以上に綺麗に磨き上げられていることに気づきました。
特に何かが変わったわけではない。けれど、ガラスは一点の曇りもなく、床の隅にも塵ひとつない。その空間にいるだけで、清々しい気持ちになりました。
私たちが「当たり前」と感じている快適さは、決して自然に生まれるものではありません。今回ご紹介した除雪の話もそうですが、私たちの知らないところで、誰かが黙々と汗を流し、その「当たり前」を懸命に支えてくれている。
清掃員の方の丁寧な仕事ぶりを思い浮かべながら、改めてそのことに気づかされました。
不動産の価値も、登記情報や図面といった「見える」情報だけで決まるわけではありません。日々の地道な管理や、住民の方々との良好な関係性といった、「見えない」価値の積み重ねが、その本質を形作っているのだと思います。
「当たり前」の裏側にある物語を想像する力。それを忘れずにいたい、と感じた出来事でした。
次回も、少しでもお役に立つ情報をお届けできるよう努めます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 発行人
株式会社三成開発 村上哲一
〒860-0088 熊本県熊本市北区津浦町44番5号
E-MAIL:murakami@3sei.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
不動産覚書:https://i-magazine.bme.jp/92/193/197/XXXX
熊本の開発許可申請:https://i-magazine.bme.jp/92/193/198/XXXX
「まち」を「つくる」:https://i-magazine.bme.jp/92/193/199/XXXX
熊本の登記測量:https://i-magazine.bme.jp/92/193/200/XXXX
熊本の経営事項審査:https://i-magazine.bme.jp/92/193/201/XXXX
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ メールの配信解除はこちらから
XXXX
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
不動産覚書~要点だけ。メールで届く、不動産の本質~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
XXXXさん
おはようございます。村上です。
「このエリアは、行政の対応がどうも…」
顧客との会話の中で、そんな声を聞いたことはありませんか?
どんなに魅力的な物件でも、除雪やごみ収集といった日々の行政サービスへの不満は、エリア全体の評価を静かに、しかし確実に蝕んでいきます。
「見えない公共サービス」への不満が、不動産価値を毀損するリスクになりつつある今、私たちは何をすべきでしょうか。
今回は、ある町の除雪業務改革の事例から、ICTを活用して「住民の不満」を「エリアの信頼」へと転換させたプロセスを紐解きます。これは、未来の不動産価値を考える上で、避けては通れないテーマです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ メイントピック|除雪DXに学ぶ「選ばれる街」の条件
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
多くの地方都市が抱える、インフラ老朽化と担い手不足。この課題は、特に冬の「除雪」業務に凝縮されて現れます。住民からの「いつ来るのか」という問い合わせ、職員の疲弊、そして非効率な現場作業…この負のスパイラルが、行政への不信感を募らせていました。
この根深い課題を、岩手県のある町がICTの力で見事に解決しました。
◆課題解決の鍵は、身近な技術の組み合わせ
彼らが導入したのは、特別な魔法ではありません。私たちのスマートフォンにも搭載されている「GPS(全地球測位システム)」と「GIS(地理情報システム)」を組み合わせた、シンプルな「除雪車両管理システム」でした。
GPSで「見える化」する
すべての除雪車両に手のひらサイズのGPS端末を設置。これにより、各車両が「今どこで、何をしているか」がリアルタイムで正確に把握できるようになりました。
GISで「意味」を持たせる
役場のPCに表示される電子地図(GIS)上に、全車両の位置情報を表示。優先道路や作業完了エリアなどを色分けすることで、これまで運転手の頭の中にしかなかった情報が、誰の目にも明らかな「意味のあるデータ」へと変わりました。
◆ICT導入がもたらした、劇的な変化
この「見える化」は、関係者全員に驚くべき変化をもたらしました。
【役場職員】自信に満ちた回答が可能に
住民からの問い合わせに対し、モニターを見ながら「〇〇地区を現在作業中です。ご自宅周辺には約1時間後に到着する見込みです」と、データに基づいた的確な回答が可能に。クレーム対応のストレスから解放されました。
【現場の運転手】煩雑な事務作業からの解放
走行ルートや作業時間はシステムが自動で記録し、日報を作成。疲労困憊の中で行っていた手書きの報告業務がなくなり、本来の作業と休息に集中できるようになりました。
【住民】不安から「安心と信頼」へ
「いつ来るか分からない」という最大の不安が解消されたことで、行政への不満は信頼へと変わりました。
◆数字が証明する、圧倒的な導入効果
この変革は、感覚的なものではなく、明確な数字となって表れています。
報告・集計業務:9割以上 削減
住民からの問い合わせ:7割 減少
全体の燃料費:15% 削減
これは、コスト削減と住民満足度の向上を同時に実現した、まさに「課題解決型DX」の成功事例です。
◆不動産開発に活かすべき「3つの視点」
この事例は、私たち不動産業に携わる者にとっても示唆に富んでいます。
「マネジメントされた街」という付加価値
行政サービスが効率的で、情報が透明化されているまちは、それ自体が強力なセールスポイントになります。物件の価値は、ハード(建物)だけでなく、ソフト(運営管理の質)によって大きく左右される時代です。
ICTインフラは「第4のインフラ」
水道・ガス・電気に加え、データを活用した行政基盤という「第4のインフラ」が整備されているかは、エリアの将来性を見極める重要な指標となります。
公民連携でエリア価値を共創する
開発計画段階から、地域のICT基盤と連携するスマート街区を提案するなど、行政と共にエリア全体の価値を高める視点が、これからのデベロッパーには不可欠です。
インフラ運営の質が、不動産の価値を決める。この事実は、今後の事業戦略を立てる上で、決して無視できない要素となるでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 編集後記|「当たり前」を支えるもの
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
先日、査定を依頼されたマンションのエントランスが、いつも以上に綺麗に磨き上げられていることに気づきました。
特に何かが変わったわけではない。けれど、ガラスは一点の曇りもなく、床の隅にも塵ひとつない。その空間にいるだけで、清々しい気持ちになりました。
私たちが「当たり前」と感じている快適さは、決して自然に生まれるものではありません。今回ご紹介した除雪の話もそうですが、私たちの知らないところで、誰かが黙々と汗を流し、その「当たり前」を懸命に支えてくれている。
清掃員の方の丁寧な仕事ぶりを思い浮かべながら、改めてそのことに気づかされました。
不動産の価値も、登記情報や図面といった「見える」情報だけで決まるわけではありません。日々の地道な管理や、住民の方々との良好な関係性といった、「見えない」価値の積み重ねが、その本質を形作っているのだと思います。
「当たり前」の裏側にある物語を想像する力。それを忘れずにいたい、と感じた出来事でした。
次回も、少しでもお役に立つ情報をお届けできるよう努めます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 発行人
株式会社三成開発 村上哲一
〒860-0088 熊本県熊本市北区津浦町44番5号
E-MAIL:murakami@3sei.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
不動産覚書:https://i-magazine.bme.jp/92/193/197/XXXX
熊本の開発許可申請:https://i-magazine.bme.jp/92/193/198/XXXX
「まち」を「つくる」:https://i-magazine.bme.jp/92/193/199/XXXX
熊本の登記測量:https://i-magazine.bme.jp/92/193/200/XXXX
熊本の経営事項審査:https://i-magazine.bme.jp/92/193/201/XXXX
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ メールの配信解除はこちらから
XXXX
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━