【不動産覚書】なぜ街のアップデートは止まるのか?再開発を巡る「大問題」の正体
2025/08/18 (Mon) 07:40
━━━━━━━━━━━━vol.1035━2025.08.18━
不動産覚書~要点だけ。メールで届く、不動産の本質~
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XXXXさん
おはようございます。村上です。
「新しいビルが建つはずだったのに、計画が止まってしまった」
「建設コストの高騰で、マンションの価格がさらに上がるらしい」
最近、私たちの身の回りで、そんな話を耳にする機会が増えていませんか?
楽しみにしていた街のアップデートが、なぜかスムーズに進まない。その裏側では今、建設業界と不動産業界全体を揺るがす、深刻な「大問題」が静かに進行しています。
今回は、全国で相次ぐ再開発プロジェクトの遅延や見直しの実態と、その根本原因を深掘りします。この問題が、今後の不動産価格や私たちの暮らしにどう影響するのか。その本質に迫ります。
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■ メイントピック|なぜ街のアップデートは止まるのか?再開発を巡る「大問題」の正体
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今、全国の都市開発や再開発プロジェクトに「待った」がかかっています。「完成時期の延期」や「事業費の増加」が相次ぎ、中には計画そのものが白紙に戻るケースも出てきました。
なぜ、このような事態が起きているのでしょうか。その背景には、いくつかの根深い原因が複雑に絡み合っています。
1.計画を狂わせる二大要因:「コスト高」と「人手不足」
プロジェクトが停滞する直接的な原因は、主に次の二つです。
A. 建設資材の歴史的な高騰
木材、鉄骨、コンクリートなど、建物を構成するほぼ全ての資材価格が、過去にないレベルで高騰しています。世界的な需要増や円安などが影響し、当初の予算では到底収まらない状況です。
B. 深刻な人手不足と人件費の上昇
建設現場では、職人の高齢化や若者離れによる人手不足が続いています。少ない働き手に仕事が集中するため、人件費も上昇。これも建設コストを押し上げる大きな要因となっています。
例えるなら、カレーを作ろうとしたら、材料も高騰し、料理人も足りず、結果的に一皿の値段を上げざるを得ない状況に似ています。
2.再開発の「お金の仕組み」が崩壊の危機に
再開発事業は、主に「保留床(ほりゅうゆか)」の売却益で建設費をまかないます。
保留床とは?
再開発で新しく建てたビルやマンションのうち、事業者が販売できるスペースのこと。この売却代金が、事業の主な収入源となります。
しかし、建設コストがあまりにも高騰しすぎたため、「保留床をすべて売却しても、建設費を回収できない」という危機的な状況が生まれています。事業の根幹である収益構造そのものが成り立たなくなり、計画の見直しや中止に追い込まれているのです。
3.この問題は、不動産市場にどう影響するのか?
この「大問題」は、私たちの住まい選びにも直結します。
(1)新築マンションの供給が減る可能性
再開発プロジェクトの停滞は、将来的に市場に出てくる新築マンションの数が減ることを意味します。選べる物件の選択肢が少なくなるかもしれません。
(2)価格の二極化が進む
今後のマンション価格は、二つの相反する力によって動くと考えられます。
押し上げる力:建設コストの高騰分が、そのまま販売価格に上乗せされる(特に需要の多い都心部)。
押し下げる力:人口減少が進む地方では、高すぎる価格では買い手がつかず、価格が伸び悩む。あるいは供給自体がなくなる。
結果として、「都心部はさらに高騰し、郊外・地方は伸び悩む」という価格の二極化が一層進む可能性があります。
この問題は単なる建設業界の話ではなく、私たちの住む街の未来、そして不動産市場のあり方そのものを左右する、非常に重要なテーマなのです。
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■ 編集後記|変わる街並みと、変わらないもの
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今回のテーマである「再開発の停滞」について考えていると、ふと子供の頃に遊んだ空き地のことを思い出しました。
そこは特に何があるわけでもない、ただの草むらでしたが、私たちにとっては秘密基地であり、冒険の舞台でした。いつしかその場所には立派なマンションが建ち、当時の面影はもうありません。
街が新しく、便利になることは素晴らしいことです。しかし、その変化の裏側で、誰かの思い出の風景が静かに消えていく。不動産の仕事は、そんな街の変化の最前線にいるのだと、改めて感じます。
コストや効率だけでは測れない、土地や建物に宿る「人の記憶」や「時間」。そうした目に見えない価値を大切にしながら、これからの街づくりと向き合っていかなければならない。そんなことを考えさせられた一件です。
次回も、少しでもお役に立つ情報をお届けできるよう努めます。
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■ 発行人
株式会社三成開発 村上哲一
〒860-0088 熊本県熊本市北区津浦町44番5号
E-MAIL:murakami@3sei.jp
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不動産覚書:https://i-magazine.bme.jp/92/193/177/XXXX
熊本の開発許可申請:https://i-magazine.bme.jp/92/193/178/XXXX
「まち」を「つくる」:https://i-magazine.bme.jp/92/193/179/XXXX
熊本の登記測量:https://i-magazine.bme.jp/92/193/180/XXXX
熊本の経営事項審査:https://i-magazine.bme.jp/92/193/181/XXXX
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XXXX
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XXXXさん
おはようございます。村上です。
「新しいビルが建つはずだったのに、計画が止まってしまった」
「建設コストの高騰で、マンションの価格がさらに上がるらしい」
最近、私たちの身の回りで、そんな話を耳にする機会が増えていませんか?
楽しみにしていた街のアップデートが、なぜかスムーズに進まない。その裏側では今、建設業界と不動産業界全体を揺るがす、深刻な「大問題」が静かに進行しています。
今回は、全国で相次ぐ再開発プロジェクトの遅延や見直しの実態と、その根本原因を深掘りします。この問題が、今後の不動産価格や私たちの暮らしにどう影響するのか。その本質に迫ります。
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■ メイントピック|なぜ街のアップデートは止まるのか?再開発を巡る「大問題」の正体
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今、全国の都市開発や再開発プロジェクトに「待った」がかかっています。「完成時期の延期」や「事業費の増加」が相次ぎ、中には計画そのものが白紙に戻るケースも出てきました。
なぜ、このような事態が起きているのでしょうか。その背景には、いくつかの根深い原因が複雑に絡み合っています。
1.計画を狂わせる二大要因:「コスト高」と「人手不足」
プロジェクトが停滞する直接的な原因は、主に次の二つです。
A. 建設資材の歴史的な高騰
木材、鉄骨、コンクリートなど、建物を構成するほぼ全ての資材価格が、過去にないレベルで高騰しています。世界的な需要増や円安などが影響し、当初の予算では到底収まらない状況です。
B. 深刻な人手不足と人件費の上昇
建設現場では、職人の高齢化や若者離れによる人手不足が続いています。少ない働き手に仕事が集中するため、人件費も上昇。これも建設コストを押し上げる大きな要因となっています。
例えるなら、カレーを作ろうとしたら、材料も高騰し、料理人も足りず、結果的に一皿の値段を上げざるを得ない状況に似ています。
2.再開発の「お金の仕組み」が崩壊の危機に
再開発事業は、主に「保留床(ほりゅうゆか)」の売却益で建設費をまかないます。
保留床とは?
再開発で新しく建てたビルやマンションのうち、事業者が販売できるスペースのこと。この売却代金が、事業の主な収入源となります。
しかし、建設コストがあまりにも高騰しすぎたため、「保留床をすべて売却しても、建設費を回収できない」という危機的な状況が生まれています。事業の根幹である収益構造そのものが成り立たなくなり、計画の見直しや中止に追い込まれているのです。
3.この問題は、不動産市場にどう影響するのか?
この「大問題」は、私たちの住まい選びにも直結します。
(1)新築マンションの供給が減る可能性
再開発プロジェクトの停滞は、将来的に市場に出てくる新築マンションの数が減ることを意味します。選べる物件の選択肢が少なくなるかもしれません。
(2)価格の二極化が進む
今後のマンション価格は、二つの相反する力によって動くと考えられます。
押し上げる力:建設コストの高騰分が、そのまま販売価格に上乗せされる(特に需要の多い都心部)。
押し下げる力:人口減少が進む地方では、高すぎる価格では買い手がつかず、価格が伸び悩む。あるいは供給自体がなくなる。
結果として、「都心部はさらに高騰し、郊外・地方は伸び悩む」という価格の二極化が一層進む可能性があります。
この問題は単なる建設業界の話ではなく、私たちの住む街の未来、そして不動産市場のあり方そのものを左右する、非常に重要なテーマなのです。
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■ 編集後記|変わる街並みと、変わらないもの
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今回のテーマである「再開発の停滞」について考えていると、ふと子供の頃に遊んだ空き地のことを思い出しました。
そこは特に何があるわけでもない、ただの草むらでしたが、私たちにとっては秘密基地であり、冒険の舞台でした。いつしかその場所には立派なマンションが建ち、当時の面影はもうありません。
街が新しく、便利になることは素晴らしいことです。しかし、その変化の裏側で、誰かの思い出の風景が静かに消えていく。不動産の仕事は、そんな街の変化の最前線にいるのだと、改めて感じます。
コストや効率だけでは測れない、土地や建物に宿る「人の記憶」や「時間」。そうした目に見えない価値を大切にしながら、これからの街づくりと向き合っていかなければならない。そんなことを考えさせられた一件です。
次回も、少しでもお役に立つ情報をお届けできるよう努めます。
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■ 発行人
株式会社三成開発 村上哲一
〒860-0088 熊本県熊本市北区津浦町44番5号
E-MAIL:murakami@3sei.jp
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不動産覚書:https://i-magazine.bme.jp/92/193/177/XXXX
熊本の開発許可申請:https://i-magazine.bme.jp/92/193/178/XXXX
「まち」を「つくる」:https://i-magazine.bme.jp/92/193/179/XXXX
熊本の登記測量:https://i-magazine.bme.jp/92/193/180/XXXX
熊本の経営事項審査:https://i-magazine.bme.jp/92/193/181/XXXX
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